認証ページは誰が提供すべきか

認証ページを認証基盤側でホストする(Hosted Login)か、各プロダクトに埋め込む(Embedded Login)か。セキュリティ、SSO、UX、運用コストの観点で比較する。

はじめに

自社で OIDC Provider を運営するとき、「ログイン画面をどこに置くか」は重要な設計判断です。

選択肢は 2 つ:

  1. Hosted Login — 認証基盤がログインページを丸ごと提供する。プロダクトはリダイレクトするだけ
  2. Embedded Login — 各プロダクトがログインフォームを自前で持ち、バックエンドで認証 API を叩く

結論から言うと、Hosted Login が正解です。この記事ではその理由を整理します。

Hosted Login の動き

認証基盤 (auth.example.com)プロダクト A (cases.example.com)ユーザー認証基盤 (auth.example.com)プロダクト A (cases.example.com)ユーザーauth.example.com のログインフォーム(メール / パスワード / Google でログイン / ログイン)「ログイン」ボタン押下/oidc/authorize へリダイレクトログイン画面を表示認証成功認可コードで戻る/callback?code=xxxコードをトークンに交換トークンログイン完了

プロダクトはログイン UI を一切持ちません。ユーザーは一旦 auth.example.com に移動し、認証後にプロダクトに戻ってきます。

Embedded Login の動き

認証 API (auth.example.com/auth/login)プロダクト A バックエンドプロダクト A フロントエンド (cases.example.com)ユーザー認証 API (auth.example.com/auth/login)プロダクト A バックエンドプロダクト A フロントエンド (cases.example.com)ユーザーcases.example.com のログインフォーム(メール / パスワード / ログイン)メールとパスワードを入力パスワードをバックエンドに送信認証 API を呼び出しトークン取得ログイン完了

プロダクトがログインフォームを持ち、パスワードを受け取って認証 API に送信します。

比較

観点Hosted LoginEmbedded Login
パスワードの経路認証基盤にしか送られないプロダクトを経由する
SSO自然に実現(認証基盤の cookie)実現困難
プロダクト側の実装リダイレクトするだけログインフォーム + API 呼び出し
UI の一貫性全プロダクトで同じログイン画面プロダクトごとにバラバラ
UI のカスタマイズ認証基盤側で管理プロダクトが自由に変更可能
ログイン UI の更新1 箇所で全プロダクトに反映各プロダクトで個別対応
UXリダイレクトが入るシームレス
MFA 対応認証基盤が一括対応各プロダクトで実装が必要
セキュリティ監査認証基盤だけ監査すればよい全プロダクトを監査する必要あり

Hosted Login を選ぶべき理由

1. パスワードがプロダクトを通らない

Embedded Login では、ユーザーのパスワードがプロダクトのフロントエンド → バックエンドを経由します。

パスワード

パスワード

ユーザー

プロダクトA

認証API

プロダクトAがパスワードを見れる

これは以下のリスクを生みます:

Hosted Login なら、パスワードは auth.example.com にしか送られません。プロダクトが受け取るのは認可コードだけです。

2. SSO が自然に動く

Hosted Login では、認証基盤のドメイン(auth.example.com)にセッション cookie が保存されます。

auth.example.comプロダクト Bプロダクト Aユーザーauth.example.comプロダクト Bプロダクト Aユーザーセッション cookie があるのでログイン画面スキッププロダクト A にログインリダイレクト(認証)セッション cookie が作られるプロダクト B にアクセスauth.example.com にリダイレクト即座に認可コード発行してプロダクト B に戻るログイン完了(ユーザーはログイン画面を見ていない)

Embedded Login でこれを実現するには、各プロダクトが認証基盤のセッション状態を確認する仕組み(hidden iframe や silent authentication)が必要になり、複雑さが大幅に増します。

3. MFA の追加が 1 箇所で済む

将来 MFA(TOTP、WebAuthn 等)を追加するとき:

4. セキュリティ監査のスコープが小さい

認証に関するセキュリティ監査(SOC 2、ISO 27001 等)を受ける場合:

5. OAuth 2.0 / OIDC の標準に沿っている

Authorization Code Flow は本来、ユーザーを認可サーバーにリダイレクトして認証する設計です。Embedded Login で Resource Owner Password Grant を使うのは OAuth の設計意図に反しており、OAuth 2.1 で正式に廃止されます。

Hosted Login の弱点と対策

弱点 1: リダイレクトの UX

ユーザーがプロダクトのドメインから一旦離れるのは、UX として若干の違和感があります。

対策:

弱点 2: カスタマイズの制限

ログインページのデザインを各プロダクトに合わせたい場合、認証基盤側で対応する必要があります。

対策:

GET /oidc/authorize?client_id=cases-app&theme=cases
→ Cases プロダクト用のデザインでログイン画面を表示

弱点 3: 認証基盤がダウンすると全停止

これは Hosted Login 特有の問題ではなく、認証基盤に依存するすべての設計で同じです。認証基盤の高可用性は前提条件です。

Embedded Login が許容されるケース

ケース理由
ネイティブモバイルアプリOS が提供する WebView / Custom Tabs で Hosted Login を表示するのが標準だが、独自 UI を求められることもある
レガシーシステムの移行期既存のログインフォームを維持しながら段階的に Hosted Login に移行
ファーストパーティの 1 プロダクトのみSSO が不要で、認証基盤とプロダクトが同一チームの場合

ただし、これらのケースでも 将来的に Hosted Login に移行する前提 で設計しておくのが望ましいです。

主要サービスの選択

サービス方式
GoogleHosted Login(accounts.google.com)
GitHubHosted Login(github.com/login/oauth)
Auth0Hosted Login(Universal Login を推奨)
Firebase Auth両方(Hosted 推奨)
CognitoHosted UI あり(カスタマイズ制限あり)
OktaHosted Login(Sign-In Widget も提供)

ほぼすべてのサービスが Hosted Login を推奨しています。

ログインページの品質

Hosted Login を採用するなら、ログインページの品質が全プロダクトの第一印象を決めます。最低限押さえるべきポイント:

項目内容
レスポンシブモバイル・タブレットで崩れない
高速3 秒以内にインタラクティブ
アクセシビリティキーボード操作、スクリーンリーダー対応
エラーメッセージ「メールアドレスまたはパスワードが正しくありません」(どちらが間違いかは言わない)
ブランディング会社ロゴ、統一カラー
多言語日本語・英語(最低限)
ソーシャルログインボタンGoogle 等のボタンデザインガイドラインに準拠

まとめ

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